インド旅行記 ― 第三部 ―

  第20章 Epilogue ― in Mumbai ―  

早朝、ムンバイの駅に降り立つと 例のごとくタクシードライバーやリクシャーワーラー たくさんの客引きに囲まれた。 声を掛けてきた客引きの中に ターバンを巻き 銀縁の眼鏡をかけ 長いヒゲを蓄えた恰幅の良い男がいた。 スィク教徒だろう。 我々はなぜかな…

  最終章 ゴアのプールでバタフライ 

夜のビーチは最高だ。 それがゴアのであればなお格別。 星空の下 砂浜の上に置かれたテーブルとイス。 電飾と裸電球からのほのかな光。 そしてテーブルの上に並ぶ 新鮮な魚介類とキングフィッシャー・ビール。 バックミュージックは波の音と人々の笑い声だ。…

  第18章 ゴールド・エクスペリエンス

O野峰が限界だ。 気温30度。 見渡せばヤシなども立ち並ぶ 南国情緒溢れるマドガオンの駅で 毛布に包まり震えている。 どうやら本格的に風邪をひいたらしい。 あきらかに辛そうだ。 我々は マドガオンの駅前で とりあえずプリペイドタクシーのチケットを買…

  第17章 ストレンジジャーニー

ホスペット発 マドガオン行き。 マドガオンの先に待つのは かつてヒッピーの聖地と呼ばれたゴアだ。 ゴアを訪れるのは 7年前のファーストインディア以来。 その時もかつてのような ヒッピーの聖地としての表情は薄れてしまっているように思えたが それでも…

  第16章 ホスペットの朝 

朝のホスペットは 意外なほど涼しかった。 いや、むしろ肌寒いくらいだ。 ここへきて風邪をひいてしまったO野峰は エアインディアの機内から拝借してきた毛布を 身体に巻きつけている。 午前6時。 我々は朝5時に起き 6時半出発の列車に乗るため ハンピか…

  第15章 ダラーとウィクラム ― in HAMPI 5 ―

薄い雲の隙間から溶け出した太陽が 零れ落ちるように山際に吸い込まれていく。 ダラー、ウィクラムツアーの締めは 村のはずれの高い丘から眺める ハンピの夕焼けだった。 西の空が朱色から徐々に暗みがかるのを眺めながら たわいも無い会話を繰り広げる。 「…

  第14章 ワタシハ ガイド デス ― in HAMPI 4 ―  

さて、そろそろ約束の時間だ。 山を下りた我々は ハンピ村の中で 一番眺めの良さそうな宿の屋上にのぼり ペプシを飲みながら一服した後 ダラー、ウィクラムと合流した。 ハンピには 世界遺産のハンピ遺跡群がある。 本当は自転車でサイクリングも兼ねてゆっ…

  第13章 デカンの風 ― in HAMPI 3 ―  

ハンピ村に日本人3人。 ボスの中JOE。 リトルボスの俺。 そしてクレイジーマンのO野峰。 「ちょっと待て!なんで俺だけクレイジーなんだ?!」 ダラーに問うO野峰。 「眼を見ればわかる。お前の眼はクレイジーだ。 お前はクレイジーマンだ。間違いない…

    第12章 CRAZY GONNA CRAZY ― in HAMPI 2 ―

20分ほどでリクシャーはハンピに到着した。 そして当然のように安宿に連れて行かれる。 「この宿はハンピでベストだ!」 リクシャーを飛び降り 自信たっぷりに宿を指差す 背の低い男。 なるほど。 客引きもやってるのね。 リクシャーワーラーは スキルを次…

  第11章 ノーライセンス

「バス停までなら20ルピー。 ハンピ村までなら60ルピーだ。」 リクシャーに乗り込むや否や 早速料金の提示をしてくる 背の低い男。 キャップの男はその隣で我々の様子を伺っているだけだ。 おそらく背の低いちょび髭の男とキャップをかぶったごつい男は…

  第10章 Who is Boss?

「ハロォォォォォウ。ジャパニィぃぃぃぃ。」 爽やかな朝をぶち壊すような ねっとりとした声で声を掛けられた。 ここはホスペット。 目の前には 背が高く 猫背で ゆるいパーマヘアー、 垂れ眼、ちょび髭の やせた男が立っている。 ハンサムといえばハンサム…

  第9章 Train for BANGALORE

けたたましい電子音で目が覚める。 早朝6時。 昨夜はほとんど眠れなかった。 30度を超える蒸し暑い夜。 風邪対策のためファンを止めて寝たのが 仇となった。 暑いし外はなぜかうるさいしで 眼を閉じても眠れやしない。 やっと涼しくなってきて まどろんで…

  第8章 今夜、インドのバーで ― in CHENNAI 4 ―

夕食を済ませ 宿の部屋に戻る途中だった。 宿の敷地の入り口右手 錆びかけた看板が立っている。 BAR。 バー?! 「おい、バーがあるぞ!!」 ホテル・タミルナードゥは州経営の安宿。 エアコン無し、ホットシャワー無し 部屋もベッドも狭く お世辞にも清…

  第7章 THE FAMILY RESTAURANT ― in CHENNAI 3 ―  

蒸し暑い夜 夕食を採るため宿の近くの大通りを散策していたときだった。 妙に明るい電飾を誇る インドに似つかわしくない小奇麗な店が眼に留まる。 店の名前は ザ・ファミリーレストラン。 ファミレス?! インドにファミレス?!! ここでしょ!!ここで飯…

  第6章 そんなチェンナイの午後 ― in CHENNAI 2 ―  

食堂でミールスを腹いっぱい平らげたあとは 本日のミッション。 我々のような移動型インド個人旅行で 日々重要なのは 移・食・住。 美味い飯は食った。 宿もとりあえず安いところを確保済み。 となると 残るは『移』。 次の町への移動手段を確保しなければな…

  第5章 ミールス・ミールス・ミールス

車窓からの景色というのは 実に美しく赴き深く 時に物悲しい。 インドに至っては正にそうだ。 それはバスからの景色とて例外ではない。 大都市を1歩遠ざかれば すぐに道路脇にサトウキビ畑が広がり 椰子の木が風に踊り 時折、海面に反射した光が眼を焦がす…

  第4章 Like a Rolling Stone

海外において 特にインドの田舎のような衛生環境が万全ではない地域において 生水、またはその生水から作った氷は いささか危険である。 コレラ、赤痢こそ最近は聞かなくなったが それでも旅行者の大半は 生水、もしくは氷で当たる。 ジャワ島で喰らったアイ…

インド旅行記 ― 第三部 ―  第3章 雨のタミル・ナードゥ

チェンナイは 雨だった。 雨のインドは初めてだ。 ここチェンナイがあるタミル・ナードゥ州は 東北モンスーンの影響を受けて 現在雨季である。 インドの雨季といえば 路上が水で浸かり 下水が逆流し コレラ、マラリヤ大流行と聞いていたが 想像していたほど…

  第2章 TRANSIT  

「エア・インディアはクレイジーだ。」 インド人っぽい男が 成田空港のチェックインカウンターで エア・インディアの職員に漏らしていた愚痴だ。 どうやら彼はエア・インディアの到着8時間遅れを味わったらしい。 確かに我々が乗ったエア・インディアもクレ…

  第1章 出国前夜

深夜。 重いリュックを担ぎ 駆け回る3人。 闇に浮かぶ白い布と 鉄の塊。 奴らの肌は漆黒の闇に溶け込み 向かう先に光は無く この道とエンジンを切ったタクシーの列は 果てしなく続くかのように思える。 ここはデリー。 3度目のインドは エアインディアの到…