第10章 Who is Boss?


「ハロォォォォォウ。ジャパニィぃぃぃぃ。」


爽やかな朝をぶち壊すような
ねっとりとした声で声を掛けられた。


ここはホスペット。
目の前には
背が高く
猫背で
ゆるいパーマヘアー、
垂れ眼、ちょび髭の
やせた男が立っている。
ハンサムといえばハンサムなのだが
顔には絶えずいやらしい笑みを浮かべている。
どことなく友人のバースに似ている気もする。
こいつを偽バースと名づけよう。


バンガロールに昼過ぎに到着した我々は
その日のうちにホスペット行きの夜行列車に飛び乗った。


ここホスペットから隣村のハンピに行きたいのだが
バス乗り場が分からず駅前をうろついていると
この偽バースが現れたのだ。


「ジャパニィィィ、ハンピに行くのかぁぁぁ?!」


偽バースは話しかけるときにその高い背を屈め
わざわざ耳元で囁くようにしゃべってくる。


「そうなんだけど、バス乗り場はどこ?」


「バス乗り場はぁぁぁここから2キロ先だぁぁ。
 遠いから俺のリキシャーに乗っていけぇぇぇぇ。
 ハンピではぁぁぁヴィッキーっていう宿も紹介できる。」


ヴィッキー・ゲストハウス・・・確かガイドブックに載ってたな。


俺が偽バースと話している間
中JOEはキャップをかぶった南インド顔のいかつい男、
O野峰は白いYシャツが映えるちっちゃいおっさんに捕まったようだ。


一旦集合。


「どうする?」


「あのおっちゃんがリキシャー乗ってけって。」


「あいつも俺のリクシャーに乗ってけって言ってるよ。」


「バス停まで歩くってのも手じゃない?」


我々が相談していると
偽バース達も我々に寄ってきた。


「へぇぇぇいマイボォォォス、マイリキシャー イズ ベェスト!」


ボス?!


「ノーノー、マイボス!マイリキシャー!!」


キャップをかぶった南インド顔は中JOEに接近。


「ヘイッボス!!マイリキシャー!!」


そしてちっちゃいおっさんはO野峰へ。


「ヘイッボス!!マイリキシャー!!カモンッ!!」


?!
・・・お前誰だぁぁぁーーー!!?


続々とインド人達が集まってくる。
収集がつかなくなってきた。


「ボォォォス!!」


「ボス!!」


「ヘイッ、ボス!?」


「わかったわかった!ちょっと待て!」


「仕方ない。リクシャーで行こう。」


集まったインド人達に説明を始める。


「お前のボスは俺、お前のボスはこいつで、お前のボスはこいつだ。
 今から俺達は勝負をして勝ったボスがどのリクシャーに乗るか決める。
 ちょっと待ってろ。」


そして3人でじゃんけん。


中JOEの勝利。


「よし、お前のリキシャーだ!!」


キャップの男の肩を叩く。


「オーー!!マイボス!!!」


ぎょろっとした眼を輝かせるキャップの男。


対照的にがっくりと肩を落とす
偽バース達に別れを告げ
キャップの男のリキシャーのもとへ向かう。
後ろからなぜか背の低い七三分けの男もついてくる。


リキシャーは駅の近くの木陰に置いてあった。


我々3人はリキシャーの後部座席に乗り込む。
当然のように運転席の隣に滑り込んでくる
背の低い男。


「ハロージャパニ!!レッツゴー ハンピ!!」



・・・誰??









つづく