第12章 CRAZY GONNA CRAZY ― in HAMPI 2 ―


20分ほどでリクシャーはハンピに到着した。
そして当然のように安宿に連れて行かれる。


「この宿はハンピでベストだ!」


リクシャーを飛び降り
自信たっぷりに宿を指差す
背の低い男。


なるほど。
客引きもやってるのね。


リクシャーワーラーは
スキルを次々と身に着けることによって
レベルアップしていく。


まず、リクシャーの運転。
これが出来ないとそもそもリクシャーワーラーではない。
リクシャーで人を運ぶことによって
ルピーを得ることが出来る。


次に、多少の英語を学び
コネクションを築くことによって
客引きが出来るようになる。
これでリクシャーの運賃プラス
連れて行った宿、店からの紹介料(コミッション)も
せしめることが出来るようになる。


そして、さらに語学力を磨き
遺跡や歴史に関するちょっとした知識をかじるだけで
やつらはガイドに進化する。
これで欧米人の年配観光客から法外な額の外貨を
ぼったくることが出来るようになる。


最終的にはそうして貯めたお金での
ゲストハウスかシルクショップの経営を以って
サクセスストーリー完遂といったところだろうか。


まぁそれはさておき部屋を見るだけならタダだ。
ハンピで特にお目当ての宿があったわけではない我々は
いかつい宿のオヤジに部屋を見せてもらうことにした。
安宿のオヤジは大概いかつい。


宿の入り口をくぐると
狭いが明るいロビーが広がった。
天井から太陽の光が差し込んでいる。
どうやら吹き抜けになっているようだ。
部屋数も少なく大きい宿ではないが
宿主の眼が満遍なく届くのでセキュリティ上安心。


次に部屋。
もちろんエアコンは無しだが
ファンは付いている。
割と清潔に保たれている気もする。
広いわけではないが
ダブルベッドでふたり
床に若干スペースもあるので
エクストラベッドを使って
何とか3人寝れそうな広さだ。


「ホットシャワーは?」


やはり旅の疲れを癒すには
ホットシャワーは必須だ。


答える宿のオヤジ。


「ノープロブレムだ。
 朝、シャワーを浴びればいい。
 最近は暑い。
 水のほうが気持ちいいぞ!」


・・・あぁ、無いってことね。


ま、いっか。
我々は屋上までの吹き抜けが気に入ったこともあり
この宿に泊まることにした。


さて、少し遅くなったが朝食だ。


宿の屋上にはテーブルが4つほどあり
そこで朝食兼昼食を採ることにする。


注文を決めている頃
背の低い男とキャップの男も階段を上ってやってきた。


彼らも同じテーブルにつき
ここでやっと自己紹介が始まった。


「俺はダラーだ。USドルのダラ〜。」


自称リクシャーワーラー卒業
ガイド駆け出しの
背の低いちょび髭の男は
ダラー。
隣の眼がぎょろっとした南インド
キャップをかぶったリクシャー運転担当のごつい男が
ウィクラム。
ふたりは先輩、後輩の関係のようだ。


反対にこちらも自己紹介しようとすると
ダラーがそれを制する。


「オーケーオーケー。アイノウ。アイノウ。
 ユーアーボス!!」


「オー!ユーアーボス!!」


ウィクラムも賛同する。


そう、中JOEはボスだ。
中JOEがじゃんけんで勝ち
ボスとなり
こいつらのリクシャーに乗ることにしたのだ。


「ユーアーリトルボス!!」


えっ?俺リトルボス?
リトルボスってなんだ?副ボスってことか?


隣のO野峰が身を乗り出す。


「俺は俺は?!」



「ユーアークレイジーマン!!!」


即答!!









つづく