第11章 ノーライセンス


「バス停までなら20ルピー。
 ハンピ村までなら60ルピーだ。」


リクシャーに乗り込むや否や
早速料金の提示をしてくる
背の低い男。


キャップの男はその隣で我々の様子を伺っているだけだ。
おそらく背の低いちょび髭の男とキャップをかぶったごつい男はコンビ。
なんかス○夫とジャ○アンみたいだ。


・・・しかし隣村まで60ルピーか。
若干ボラれている気がするが
3人で割れば高くはない。
高くはない・・・が、
少し交渉してみる。


「ハンピ村まで行こう。
 ただし片道60ルピーじゃなく
 ホスペット駅までの往復と
 ハンピ村での1日チャーター
 合計1日半、ひとり50ルピー。
 3人で150ルピーでどうだ?」


背の低い男は少し悩む素振りを見せたが
キャップの男と相談することも無くOKを出した。


交渉成立。
あとは帰り際に
「ひとり150ルピーの約束だった!」
とかインドでありがちなトラブルさえ起きなければ
かなりお得な契約だ。


リクシャーを運転するのはキャップの男。
砂利だらけの街道を5分ほどで抜け
リクシャーは山道を走り出した。


木の茂みに太陽の熱が遮られ
頬を伝う風は木陰に冷やされ心地よい。



「このリクシャーは俺のなんだ。」


キャップの男の隣に座っていた背の低い男が
振り返って話しかけてきた。


「今はこいつにリクシャーを貸してるんだ。
 おれはもうリクシャーワーラーを卒業して
 ガイドになる。」


なるほど。リクシャーの運転手とガイドのコンビか。


「リクシャーを運転するのには免許がいるんだぜ。
 そうだ!俺の免許証を見せてやる。」


そういうと背の低い男は
ポケットからしわくちゃの紙を取り出した。


白黒の顔写真と手書きの文字が書きこまれた
ハンカチサイズの紙だ。


これ・・・免許証?
簡単に偽装できそうだ。


免許証?をふたたびポケットに突っ込み
ふと名案を思いついたかのようにニヤリとする背の低い男。


「おまえら、リクシャー運転してみるか?」


はっ?!
あんた、さっきリクシャー運転するのに
免許がいるって言ったばかりじゃねぇか。


「ノープロブレムだ。
 リクシャーの運転はとてもイージーだ。」


運転が簡単かどうかが問題じゃなくて
ここで無免許運転することによって
弱みを握られてあとで金よこせだとか・・・。


「あ、じゃ俺運転したい!」


運転すんの?!


俺が気の小さいことを考えているうちに
中JOEが運転を始めてしまった。


中JOEの運転でリクシャーはスイスイ進む。
こうなってくると弱みもクソもない。
どうせだったら俺も運転したい・・・。
いーなー中JOE・・・。


「あ、じゃ次俺。」


えっ?!お前も!!


O野峰も中JOEに代わって
リクシャーを運転しだす。


こうなると俺だけ無免許運転しなくても
意味が無い。
つぅか俺もリクシャー運転したい・・・。
俺も運転したい!
運転したい運転したい運転したい・・・。


「ぃやります!僕が乗ります!!」


O野峰に代わって運転席へ。


ほぅほぅこれがアクセルか。
これがブレーキ・・・と。
構造は原付とほとんど変わらない。


「ヘィッ、右手はここだ。
 ここを回せばアクセルだ。
 そしてこうやってギアチェンジだ。」


キャップの男が俺の右手を掴んでバーハンドルへ持っていく。


アクセルを回す。


リクシャーが走り出す。


おぉ、すげぇ!
俺、リクシャー運転してる!!
インドで!!
しかも無免で!!
めっちゃ楽しい!!



軽快なエンジン音を響かせ
山道をリクシャーが走る。
インド人2人と日本人3人のパーティー
ハンピに向かう。









つづく