インド、雨季のススメ


インドという国を大雑把に捉えると
旅行のベストシーズンは2、3月だろうと思う。
あれだけ広大な国だから
一概には言えないが
それでも乾季は旅がしやすい。


掲題の件、
インド、雨季のススメ
とは書いてみたが
正直、雨季に旅行するより
乾季に旅行したほうが楽なのは確か。
雨季は体調も崩しやすいし
移動もしづらい。
なにより旅に来て毎日雨続きってのは
まず、テンションが下がる。


然しながら、雨季ならではの
インドの旅というのは確かにある。
自身の旅のなかでも
それはあった。


■滝と河、車窓


インドの列車は長い。
旅のスタイルにも因るだろうが
距離的に、それに伴い乗車時間的に。
列車の車窓からは、近代的な都市ではないインドが望める。
青々と潤った山々や水田はそれだけで美しいし
時に荘厳な滝が車窓に映る。
陸橋を渡るとき、眼下に大量の水を湛えた河が流れるのも良い。
ガンジス河も
2、3月の乾季真っ只中に見るよりは
雨期明けの10月ぐらいに行った時のほうが
美しかった。
雨季ど真ん中は逆にしんどいだろうが。



ジョードプルの時計台


特に観光地としてピックアップされているわけではないが
これは素晴らしかった。
時計台の周りを囲む石畳が
雨に濡れ、時計台からの光を反射する。
足元から時計台に続く道が黄金色に輝く。
良い意味でインドらしくない、
一流のテーマパークのような
飲み込みやすい美しさだった。
雨と光は実に相性が良い。



■シーフード


雨季のほうがうまい。
良く調べてないので
理由はわからないが
実感として確かにうまい。
バリでもタイでもインドでも同じ。
うまい。
あと、フルーツもうまい。


■眠りと怠惰


「雨が私を眠らせる」。
沢木耕太郎の「深夜特急」の章題のひとつ。
作品のなかではネパールが舞台だが
降り続く雨のなか、外に出て観光に勤しむこともなく
ただただ、ゲストハウスでだらだらと過ごすこと。
これが実は結構な贅沢。
ルームサービスでチャイを飲みながら
固いベッドの上で本を読む。
時にそのまま寝転がる。
せわしない毎日を送っていたりすると
時間に追われないこと、なにも生産しないということがすごく贅沢に思える。
高い金を払って航空券を買い、
貴重な時間を使ってわざわざインドに来て
部屋から出ずにだらだらと過ごす。
日本でも出来そうだが、
決して日本では出来ない。
明日のことは考えない。もちろん来週のことも。
そんな贅沢な時間。
そして屋根を叩く雨の音は
次第に旅人を怠惰な眠りへと誘う。



■ゴアの夕陽


これに尽きる。
夕陽はもれなく、雨季。
雨の合間の晴れ間。
大気の具合だろうか。
最高に美しい。無意識に目を見開くほど非現実的で、幻想的だ。
いままでで
一番の夕陽が、ゴアの水平線に沈む夕陽だったが
これは雨季に、しかもたまたま、夕暮れのときに晴れていないと見られない。
ちょっとした奇跡だと思う。
このためだけに、また雨季のゴアに行きたいとも思う。



日本の夏休みシーズンは、インドはほぼ雨季ど真ん中。
短い夏休みにインドを訪れる場合、
素敵な旅になるかは、ほぼ賭けだが
乾季では見られない、素晴らしい雨季のインドに出会える可能性もある。
乾季に旅行に行く大学生(当時は俺もそのひとり)も多いなか、
一か八か、普通よりも少しだけ冒険したインドも良いかもしれない。
ただし列車の予約はお早めに。