インド旅行記


酔っ払ったとき
たまに過去のインド旅行記を読み返して
酒の肴にしたりする。


傑作選というわけではないが
インド旅行記の過去記事抜粋。


えぇ。手抜きですとも。


インド旅行記 ― 第二部 ―  


第13章 RANA 2  


ブッダガヤーのはずれのラナの家で
気まずい時間を過ごした帰り道
我々を乗せたバイクは
ふと駄々広い広場で停車した。


広場には白濁色のコンクリートの建物や
かやぶき屋根のレンガの建物が並び
背の高い広葉樹も何本かそびえ立っている。


おもむろに2、3度クラクションを鳴らすラナ。


「ワァーーーーー!!」


「キャーーーーーー!!」


「ヤァッハーーーーーーー!!!」


ラナがクラクションを鳴らすと
5歳から10歳ぐらいだろうか
様々な年代の子供が
歓声をあげ押し寄せてきた。


そうか!!学校か?!


一瞬にして20人を超すインドの子供たちに囲まれる日本人2人。
M上がカメラを向けると
一斉にあふれる笑顔。
小さい子達を取りまとめ
カメラの前に整列させる
年長の少年の姿が印象的であった。


インドの小学校で
子供達の笑顔に旅の疲れを癒され
一旦プージャゲストハウスに戻った後は
ラナと別行動。


チベット寺や日本寺をだらだらと回り
都市部の喧騒とはまた違う
ゆったりとしたインドを楽しみ
そして夜。


ラナとの再会。
もちろんこれも一方的に交わされた約束だ。


さすがにガンガーには及ばないものの
空虚感と神秘性とを兼ね備えた夜のネーランジャラー川、
地元民でにぎわう
安食堂で夕食のサモーサ、
数珠しか売っていない怪しいみやげもの屋を経て
俺、M上、ラナの3人は
マハーボーディ寺院を訪れた。


ゴータマ・スィッダールタ、つまり後のブッダ
悟りを得たとされる菩提樹がそびえるこのマハーボーディ寺院
世界各国から敬虔な仏教徒が集まるのだろう。
寺院内の広場という広場に
オレンジ色の袈裟を着た僧侶が溢れ
大地にひれ伏し
何度も
何度も祈りを捧げている。


その祈りの声と熱気と
月明かりと
たくさんの観光客のざわめきによって
ブッダ・ガヤーの夜が静かに揺れていた。


靴を脱ぎ
52メートルもの高さを誇る本殿で
金メッキの仏像を見た後は
裸足のまま
敷地内をたくさんの羽虫の死骸に注意しながら歩きまわる。


胡散臭くライトアップされ
神聖さがぼやけてしまった感のある
菩提樹を見上げ
観光客に餌を求め続ける鯉だかナマズだかで
溢れかえった蓮池を覗いたりしているうちに
いつの間にかM上とはぐれてしまった。


隣にはラナ。


「ヘイッ!お前の仕事は何だ?」


インドでよく訊かれる質問だ。
説明が面倒なので
ここはコンピュータ関連と答えておこう。


「そうか、じゃぁお前の親父の仕事は何だ?」


なぜ俺の親父?!


「銀行員だけど。」


「そうか、じゃぁお前の親父の年収はいくらだ?!」


俺の親父の年収を聞いてどうする気だ?!


「いや、親父の年収は良くわからないな。」


「そうか・・・じゃぁお前の友達の親父の年収はいくらだ?!」


はっ?!


なぜか我々の親父の年収に
極端に興味を示すラナ。
そのうちに出口のところでM上と合流。


3人揃ったところで
ラナが明日のスケジュールを提案する。


「・・・おいっ!お前ら、明日は山に行くぞ!!
 向こうの山奥に俺の親戚が住む村があるんだ。
 そこで鶏を絞めてチキンカレーを食おう!!
 絞めたての鶏はうまいぞーーー。
 お前ら鶏の首を絞めるチャンスだ!!
 こうだ!こう!こうやって絞め殺すんだ!!
 よし、明日は鶏の首を絞める日だ!!ガハハッ・・・!!」


当然、俺は
インドでの貴重な一日を
鶏の首を絞めるためだけに使いたくはなかった。




The NAF in the SweLL パウ】