第37章 ディレイド・ホーリー


朝、いつもと同じように目を覚ます。
目覚まし時計に害されない
清々しい朝だ。


3人それぞれが
いつもと同じように
各々のタイミングで自然と目を覚まし
目を覚ました順から
水を飲み
タバコに火を点け
取り留めのない会話を始める。


朝のチャイでも飲みたいものだが
あのヒゲ男にチャイなど頼もうものなら
いくらチップを強要されるかわからない。
昨夜買ったバナナが余っていたので
それを朝食代わりとする。


「ちょっと両替してくるわー。」


しばらく部屋でだらだらしていたが
U君が両替をするため外に出て行った。
ナベタクもそれに付いていく。


思いのほか涼しい部屋。
硬いベッドに寝転がる。
天井ではファンが緩やかに回っている。
・・・さぁいよいよ今夜にはカルカッタだ。
東インドホーリーには肩透かしを食わされたが
それでももうひとつ
東インドのハイライトが控えている。
インド屈指、いや世界屈指のメガシティ、カルカッタ
世界屈指の混沌に塗れた街。
世界屈指のエネルギーを生み出す街。
8年前から
ずっと憧れていたカルカッタ


けたたましくドアが開く。
ものの5分で2人が帰ってくる。
息を切らせ、珍しく興奮しているナベタク。


「やばいっす!!
 パウさんやばいっすよ!!
 ホテルの前に水鉄砲持ったガキが立ってますよ!!
 あとバイク乗ってるやつらが
 みんな色水入れた袋抱えてますよ!!!」



・・・えーーー?!
ずれてるーーー!!
ホーリー1日ずれてるーーーー!!!


アホかこの町のやつらは?!
なんで1日遅れでホーリーやってんだ?!!


「やばくない?!外はなんかみんなおかしなテンションだぜ?」


「いや普通にやばいと思うよ・・・。
 1日遅れでホーリーやってるその感覚もなんかアブねぇし・・・。」


それでも今日カルカッタへ向かわなければいけない。
どうあれ列車のチケットに記された出発日は今日だ。


「・・・行くか。」


12時チェックアウト。


フロントに部屋のキーを返す。
正気かよ?という顔で
我々を見る受付のオヤジ。
いつものねぇさんはいないようだ。
こんな日は自宅待機だろうか。


宿の出入り口
昼間にも関わらず
門は閉ざされ
大げさに鎖が巻かれ
大きな南京錠がぶら下がっている。


「鍵を開けて欲しくばマニーを出せ!
 今日はホーリーだから20ルピーで開けてやる。」


客に対し
訳のわからない要求をする顔を真っ赤に染めた従業員。
いや、門番か。


「おーー20ルピー?!
 ノーノー。トゥデイ イズ ホーリー
 エブリワン ハッピー!ノーマニー!!」


とりあえずこちらもハッピーなフリをして
なぁなぁで鍵を開けてもらう。


「おーサンキュー!ハッピーホーリー!!」



そして門は開かれた。









つづく