謝罪


ほんの気の迷いだったんです。


確かにインドでビーチと言えばゴアでしょう。
かつては「黄金のゴア」と呼ばれた町。
ポルトガル領だったせいか
キリスト教徒が多いせいか
インドでありながら
他のインドと違う雰囲気を持ち
ヒッピーやバックパッカーに愛された町。


U君もナベタクもゴアに行きたいと言いました。
当然でしょう。
そう何度も来れるわけではないインド。
チャンスがあるなら私もゴアを訪れたいと思います。
事実、過去2度ゴアを訪れています。


しかし、私は過去に2度訪れたゴアよりも
まだ見ぬコヴァーラムに惹かれてしまったのです。
挙句の果てに
「ゴアなんてたいしたことねぇよ。
 逆にコヴァーラムだね。逆に。
 長くインドに行ってた人は
 みんなコヴァーラム最高だって言ってるよ!」
とか言ってコヴァーラム行きを強行してしまったのです。


誤解しないでいただきたいのは
コヴァーラムも決して悪いビーチではないということです。
むしろバリ島のどのビーチよりも
私にとっては素敵でした。
快適な宿。
美味しいシーフード。
歩き心地の良い砂浜。
アラビア海に沈む
真っ赤な太陽。
人々は穏やかですし
奥まった涼しい路地は
夕涼みに散歩するのにぴったりでした。
必要なものも何だって揃っています。
タバコや飲み物、フルーツにも困らないですし
トイレットペーパーやサンダル
日本語の本だって手に入ります。
バカンスを楽しむには
これ以上無い落ち着いた
綺麗なビーチでした。
過ごしやすさという点ではゴアよりも優れていたと思います。


ただ、ビーチに何を求めるのか。
その1点で
やはり私の中で
コヴァーラムはゴアには敵わなかったのです。


快適さや
白い砂浜
海の透明度などは必要条件ではありません。
あの祭りのような熱狂
そして怠惰。
その2つだけで成り立てる場所
つまり非日常が日常として成り立っている場所
それが私にとって最高のビーチなのです。


そうなってくると
ビーチの構成も重要です。
海、砂浜、食堂、道、宿
この並びが重要なのです。
残念ながらコヴァーラムは
海、砂浜、道、食堂、宿でした。
道より先にレストランが無いと駄目なのです。
砂浜の上に建つレストラン
これが重要なのです。


砂浜の感触を足の裏に感じながら
色とりどりの電飾でほのかに照らされたテーブルで味わう
漁れたてのシーフードとインドビール。
BGMは80年代のアメリカン・ロックが良いでしょう。
そして自分達の会話と満員の客のざわめきの合間に
ふいに聞こえてくる波の音。
我々にとって非日常のインドで
砂浜の上で食事をするという非日常。
足元には餌を求める野良犬がやってきて
あまった料理を与えてみる非日常。
千鳥足で歩く帰り道で
砂浜に横たわり眠る野良牛を横目に見る非日常。
そうそう、コヴァーラムにはこの牛がいませんでした。


念のため繰り返しますが
コヴァーラムはとても素敵なビーチでした。
また行きたい場所でもあります。
ただ、やはり
ゴアは最高なのです。
良い悪いを抜きにしても
全くコヴァーラムとは
別物のビーチなのです。
もしかしたら
2回目のゴアで到着したときにちょうど出会った
この世のものとは思えないほど美しい夕暮れが
そう錯覚させているのかもしれません。



どうあれ
私にとって
インド一番のビーチは
ゴアのコルヴァビーチなのです。
うまく伝わらないかもしれませんが
コヴァーラムはひとつの町のようだった。
ゴアはひとつの国のようだった。
そんな感想です。


U君、ナベタク・・・。
ほんとごめんなさい。