第28章 TRAIN FOR DELHI


旅の終わりが近づいてきている。


ヴァラナシを出発した列車は
やわらかな闇の中
旅の終着点デリーへと向かっている。


寝台車の3段ベッドで
ふと物思いにふける。



短い旅だった。


が、日々めまぐるしく起こった様々な出来事が
脳裏に浮かんでは消えていった。


1泊目は空港だった。


リクシャワーラーに何度メインバザールに行ってくれと言っても
何度も同じ旅行代理店に連れて行かれた。


チンピラに囲まれた。


小学校で出会った無垢な目をした子供たち。


ブッダガヤの星空の下
ラナと飲み交わしたビール。
・・・あいつビール代もガソリン代も飯代も
あとで返すって言ってなかったっけな・・・。



下のベッドでは
インド人が豪快ないびきをかき始めた。



ヴァラナシで死に掛けた俺の右腕。


聖なる河ガンガーは
やはり何度見ても強く惹きつけられる凄みがあった。
考えてみれば聖地ヴァラナシに2度も足を踏み入れたことは
現地のヒンドゥー教徒からすれば
実にうらやましい夢のようなことなのかもしれない。


自称ホンモノのボート漕ぎ。


ガンガーから望むガートでの沐浴風景。


モヌーのコンサート。
4年ぶりに再会したモヌーは
たくましく成長していた。
そういえば今日モヌーに別れの挨拶をしたとき
彼は寂しそうに笑った。


「お前ら次にインドに来るのはまた4年後なんだろ・・・?」


4年後・・・
俺はまたインドに来るのだろうか。
それともこれが最後の旅だろうか。




北インドをゆっくりと走る列車の鼓動が
徐々に俺を深い眠りへと誘っていった。









つづく