第43章 Breakfast at STAR PARADISE

熱狂と混沌のホーリーの夜。
その翌朝、我々は少し遅めに目を覚まし
宿の屋上へ上った。


屋上のレストランで
インド最後の朝食。

まぁここもレストランと言っても
石畳にテーブルとイスが置いてあるだけ。
屋根は無し。
空は雲ひとつ無く
からりと晴れている。
まさに祭りの後の寂しさと静寂にぴったりの空だ。
町は昨日までの喧騒がウソのように静まり返り
日本の日曜日の朝をふと思い出させた。


注文を取りに来た
明らかに眠そうな従業員(宿の従業員兼務)に
この旅の後半
俺の朝食メニューの定番になった
エッグパラーター
バナナカード
そしてチャイをオーダー。


とりあえず注文をとりながら
あくびをするのはやめて欲しい。



・・・


・・・・・


・・・・・・遅い。


注文してから
ゆうに40分は経過している。


インドで飯が出てくるのが遅いことには
既に慣れていたつもりだったが
他に客もいないし
どう考えても遅すぎる。


絶対に厨房はホーリーの影響でぐだぐだだ。


さらに待ちに待ち
1時間が経過した頃
眠そうな従業員が
食事を運んできた。


・・・ん?


「おい・・・なんでこのヨーグルトところどころ赤いんだよ!?」


運ばれてきた俺のバナナカードには
ところどころ赤い色粉が入ってしまっている。


「ハッピーホーリー!!」


はにかみながら返す従業員。


いつまでもひきづってんじゃねぇ!


ヨーグルトに色粉が入ってくるなんて
厨房は今いったいどういう状況なんだ?!と思いながらも
作り直させてこれ以上待たされるのもしんどいので
仕方なく運ばれてきた食事に手をつけることにした。
どうせもう一度注文しても
また色粉入りだろう・・・。



我々が食事を採っている間
眠そうな従業員が手に何かを抱えて戻ってきた。


蚊取り線香だ。


「おい、これがお前らの部屋に落ちてたぞ。」


いや、勝手に部屋に入るなよ・・・。


目をきらきらさせながらしゃべり続ける従業員。


「おまえら今日で最後だろ?
 これを記念にくれ!!」


なんの記念だよ・・・。
おまえに・・・。


釈然としなかったが
我々は余った蚊取り線香
従業員にプレゼントすることにした。


満足そうに戻っていく従業員。



俺、この色粉入りバナナカード全然満足できないんですけど。





      つづく