第41章 IN DELHI

夜明け前
東の空が白み始めたころ
我々はニューデリー駅に降り立った。


風は思ったより冷たく
暗くにじんだ駅前の景色。
町はまだ眠っているようだ。


さて、最後の宿を探すか・・・。


「ハロー、ジャパニ!!ホテェル?チープホテェル?」


・・・そうか、こいつらはもう目覚めてるのか。
感慨にふける暇も無く客引きが寄ってきた。
「グッモーニンッ!!グッドホテェル!!チープ!!OK?!」


お前のせいで全然グッドモーニングじゃねぇよ。
睡眠不足の頭に客引きの声はよく響く。


くたびれたパンフレットを
何枚も我々に見せる客引き。


「あ、眠いしこいつでいいや。」
もはや自分達で歩いて宿を探すのではなく
「まぁなんとかなるでしょ」と簡単に客引きの男についていってしまう。
この慣れ慣れ感はある意味危険だ。


案内された宿はスターパラダイス。
メインバザール界隈でチェーン展開している
スターグループ(?)の一角だ。
ガイドブックによると他にスターパレスやスターヴューデラックスなるものもあるらしい。
宿泊料金はダブルルームで300ルピーちょいと若干高めだったが
グループ経営だし安全かなーということと
最後ぐらい贅沢しとくかー(とは言っても一人500円ほど)ということで
そのままチェックイン。


部屋は大きなファン、24時間ホットシャワー、さらには小さいながらもテレビ!と
申し分なし。
ここメインバザール一帯は
以前頻繁に爆弾テロが起きているらしく若干不安ではあったが
もうとにかく眠い。


太陽はもう顔を出していたが
部屋に入るなりそのまま仮眠。


昼前ぐらいに起き
屋上のレストラン(といっても屋上に机とイスがあるだけ)で
エッグパラータとバナナカード、そしてチャイで遅めの朝食。


朝食を食べた後は
デリー最大の商業地区コンノート・プレイスへ。
出がけに宿の兄ちゃんに聞いたところ
ホーリーは当日とその前夜、つまり今夜が一番盛り上がるんだそうだ。
うむ、クリスマスとイヴみたいなもんか。


コンノート・プレイスは妙に近代的だった。
バンガロール市街地に似た感じだ。
なにせ地下街まである。


ただ、普通すぎてつまらないといえばつまらないので
みやげものなどを物色し
インドでは中級レストランにあたる
マクドナルドで
羊肉のハンバーガーを食い
メインバザールへ戻る。


今度はメインバザールを散歩していると
嫌でもホーリー直前の熱気が伝わってくる。
まだ日も落ちていないのに
早々と店を閉め出す商売人。
色水の入ったウォーターガンを構え
インドの少年を追っかけまわす
羽目はずしすぎの欧米人。
その欧米人を冷ややかな目で見るインド人。
すさまじい量と種類の色粉を売っている屋台。
しかも大繁盛。
すれ違いざまに
「ヘイ、ジャパニ。今夜はホーリーだぞ?!」
とにやけながらささやく怪しいインド人。
油断すると飛んでくる色水。



そして、夜が来た。




      つづく