第38章 IN VARANASI 6


出発の日に晴れているのは良いものだ。
この旅行中1回も雨は無い。


先に旅立った日本人2人の食事代を立て替え
いよいよゴールデンロッジを後にする。


どうやら髭メガネのオヤジが駅まで送ってくれるらしい。


・・・こいつホントに暇だな。


髭メガネのオヤジに連れられ
リクシャーの往来が激しいゴードウォーリア交差点まで歩く。


交差点で髭メガネのオヤジが
サイクルリクシャーを強引に止めた。


そのサイクルリクシャーの客席には既におばぁちゃんが。


客が乗っていてもお構いなし。
髭オヤジが強引に乗り込むと
リクシャワーラーもさすがに嫌な顔をして
髭メガネのオヤジに文句を言う。


が、ここでオヤジ逆ギレ。


ものすごい剣幕でリクシャワーラーをまくし立て
黙らせた後
平然とリクシャーに乗り込み
お決まりの
「カモンッ!!ノープロブレム!!」


こういうのほんとに気まずいんですけど・・・。


リクシャワーラーは
我々、おばぁちゃん、髭メガネのオヤジの4人を乗せ
いかにもしんどそうにペダルを踏む。



途中、おばぁちゃんが降り
そして、髭メガネのオヤジも自分が行きたかったところに着いたらしく
リクシャー代を一銭も払わず
「バーーーイ!!」
と降りていった。


なんてちゃっかりしたオヤジだ。
見送りでも案内でもなんでもなく
相乗りしてタダで出掛けたかっただけじゃねぇか!



程なくサイクルリクシャーは駅に到着。


ここから列車に乗ればこの旅もいよいよ終幕へ向かう。
あとは首都であり
そして日本への帰りの飛行機が待つデリーがあるだけだ。



俺はあと数日で
この旅が終わってしまう現実を信じられずにいた。



ガンガーのほとりで
鮮やかな布に包まれた死体に火が灯され
布が燃え
肉が焼け
骨だけが残り
やがて骨も焼け
砕かれ
全て灰になり
その聖なる河に消えてゆく
燃え残りに
犬が集まり
牛が集まり
それを人が追い払う
数十メートル先の下流では
老いも若きも
男も女も
その聖なる河で身を清める
ガンガーのほとりに無数に広がるガート
そのひとつ
マニカルニカ・ガートで見たそんな景色が
ふと思い出された。





      つづく