第36章 IN VARANASI 4

ヴァラナシのゴールデンロッジの傍にある小さな店。
そこがモヌーの家であった。
それからは暇があるたびモヌーの家に入り浸り
日本の話題やインドの話題で大いに盛り上がった。


モヌーは15歳とは思えないほど
しっかりとした少年だった。


昼間は学校に通い
夜はタブラー(インドの打楽器)を習いに行く。
そして早朝には店の商品を仕入れ、
その合間合間で店番をしているらしい。


なんてタフな少年だ。
1日の睡眠時間は3時間ぐらいだとも言っていた。


英語も我々よりはるかにうまく
M上が
「インドは暑いからすぐ喉が乾くよーー・・・。」
などと言おうものなら
急に真面目な顔で
「ダメだ・・・。そうじゃない。サースティーじゃない。Thirthtyだ。」
とダメ出しされる始末。


そんなモヌーに聞いてみた。
「そういえば今週ホーリーってインド全土をあげた祭りがあるらしいじゃん?
 やっぱりここヴァラナシは聖地だから結構盛り上がるの?」


「ああ、死ぬよ。下手したら。」
驚くほど冷静に答えるモヌー。


まさか・・・。旅行者もしばしば来ているはずだ。


ただ、どうやら宗教的な理由もあり異常なほどの盛り上がりを見せるため
過去に旅行者が行方不明になったことも多数あるらしく
ホテルによってはその日の外出を禁止するところもあるそうだ。


我がゴールデンロッジもその日は外出禁止らしい。


さすがに外出禁止はつまらないし
列車の予約が取れなかったりすると厄介だ。


我々は今回のインド旅行で一番長く滞在した
ここヴァラナシを明日発つことにした。



メガネの男と金髪の男はすっかり意気投合し明日朝一でネパールに向かうという。
本来であれば我々もインドでビザを取り
ヴァラナシからパトナを経由しネパールにも入国する予定であった。
しかし日程の都合上、もはや我々にネパールに寄る余裕はなくなっていた。
M上のバッグには日本で2000円近く出して買った
ネパールのガイドブック。


「これ邪魔だなぁ〜。」


「もうネパールにも行けねぇしな・・・。」


「重いし。」


「もうはっきり言ってまったくのお荷物だね。」


「ほんと邪魔だな〜。買うんじゃなかったよ、これ。」


日本でネパールへの期待と憧れを持って購入したときとは
打って変わってひどい言われようである。


「捨てるのもなんだし
 これからネパール行くっていうあいつらにプレゼントするか?」


・・・・・


「・・・売ろうぜ。」


その日は4人でヴァラナシ最後の夕食をとり
メガネの男と金髪の男に
ネパールのガイドブックを100ルピーで売り
眠りに就いた。



次の日、朝起きると既にメガネの男と金髪の男は宿を出た後だった。


簡単な朝食を済まし、トイレに向かう。



ん・・・?
あれ?!
おっしゃあ!!来たぞこれ!!!


ここで俺に聖地ヴァラナシの追い風。


ヴァラナシ最終日、2週間ほど続いていた下痢状態からついに復活!!





      つづく