第26章 TAKE THE "A" TRAIN


深夜のインドールをリクシャーが走る。
まったく知らない町で、しかも運転席にはガラの悪いインド人2人。
なにやらわからない言葉を使い、真剣な顔でなにかを相談している。


ガイドブックのトラブル例が頭をよぎり
普段なら恐怖や不安を覚えるのだろうが
今回はそんな余裕は無い。


腹が


すさまじく痛いのだ!


もはや何処に連れて行かれようと問題では無い。
そこにトイレさえあれば。


つうかクッチャベってないで
とばせよ、リクシャーをよぉ・・・!


などとイライラしているうちにリクシャーが止まった。
到着したのは山奥でもなく旅行代理店でもなくちゃんとホテル。


もしかしたら多少のトラブルがあるかもと思っていたが
何の問題も無くガラの悪いリクシャーワーラーはホテルに連れてきてくれた。
アウランガーバードで泊まっていた宿の3倍値が張るホテルに。


フロントで空いてる部屋を尋ねると
ダブルルームで1泊700ルピー。
いや、無理ですから700ルピー。
チャイが4ルピー、コーラが15ルピー、ちょっとこじゃれたレストランのマトンカレーが50ルピーなのにここは700ルピー。


なんとか値切って500ルピーにまけてもらい
部屋に直行。
もとい、部屋のトイレに直行。


トイレに入って数秒で従業員が部屋のドアを叩いた。


「間違えた。ここは700ルピーの部屋だ。お前ら出てってくれ。」


そして連れて行かれたのはトイレもシャワーも無いボロ部屋。


あぁ700ルピーの部屋を500ルピーにまけてくれたわけじゃないのね。
・・・つうか、安い部屋空いてたんじゃん。


我々は共同の水シャワーを浴び眠りに就く。




翌朝、我々は駅に向かうため宿を出た。


駅までの道が全くわからなかったので
その辺を歩いていた男に道を尋ねる。


その男は一言「カモンッ。」とだけ言い
無言でスタスタと歩き始めた。
その男の後ろを5分ほどついて行くと、駅に到着。


男は一言「ステーション!」とだけ言い、去っていった。


インドで道を尋ねると
みやげ物屋や旅行代理店に連れて行かれたり
ガイド料を請求されたりすることもしばしばだが
この男は実に紳士だった。


駅の予約オフィスで列車のチケットの予約をし
その日の列車でインドールを後にする。



インドールでは本当にたいしたことはしていないが
駅の傍の食堂で食った
プラーオ(ピラフのようなもの。肉無し。)は実に美味かった。



アグラーへ向け列車が出発!!


奮発した。
かなり奮発した。
バスでの旅を続けてきたストレスから、かなり良いクラスの席を予約。
その名もnon-AC 1st compartment!!



エアコンこそついていないものの
なんと席はコンパートメントの個室!
硬いイスにも寝転がり放題でしかも小さな机まである。
従業員っぽい男にチャイを頼むと、ポット付きでチャイを持ってくる!
しかもタダ!
窓から入ってくる涼しい風に吹かれながら熱いチャイを飲み
外の景色に目をやると
インドの田舎の人々の暮らし、
そして、野良牛、野良豚、野良水牛。


ハイ、大満足。
二度と深夜バスなんざ乗れん!



夕方になると従業員っぽい男が個室にやってきた。
「お前ら、晩飯は食うのか?」


1等席には晩飯までついてるのか!
我々は早速晩飯を頼む。


程なく男が美味そうな晩飯を抱え戻ってくる。


晩飯を受け取ると


「ヘイッ、20ルピー!!」


普通に金は取るんかい!



晩飯を食った後も我々は快適な列車の旅を満喫。
窓の外の風景を見ているだけでも飽きない。



夜、
ふいに個室のドアがガンガンとけたたましく叩かれる。


「チャ"〜〜〜イチャイチャイ、チャ"〜〜〜〜イチャイチャイ・・・。」


いゃ、チャイいらねぇから!!
つぅか怖ぇから!!!



夜も更け、我々は眠りに就く。


旅もいよいよ北インド


列車はアグラーへ。




      つづく