第8章 IN CHENNAI 2


・・・まだインド1日目。
大きな道路をはずれ
不安になるほど人気の無い路地に入り
宿の前にタクシーが止まった。
我々はタクシーから降り
タクシーのおっちゃんや外をうろうろしていた宿の従業員風の男と
2、3言葉を交わす。


そしてタクシーのおっちゃんに運賃を渡そうとする俺。
それを受け取ろうとするおっちゃん。
少し離れたところから友人M上の声が飛ぶ。


「おい、なにやってんだ?タクシー代もう払ったぞ!?」


俺が慌ててポケットにお金をしまうと
残念そうにタクシーに戻るおっちゃん。
こちらでは二重請求なんてあたりまえらしい。



疲れきった身体で宿にチェックイン。
若干高い安宿のようで部屋はわりと予想通りという感じだった。
天井には南インドの蒸し暑い夜をかき回すように
大きなファンが回っている。
掛け布団など無い汚れたシーツのベッドが2つ。
トイレ付きの広いシャワール−ムはところどころ、いやほとんどカビで真っ黒である。


とりあえずシャワーを浴びることにした。
水が違うせいだろうか?日本よりねっとりした感じのシャワーだった。
もちろんお湯は出なかったが浴びているうちに身体も温まってきたし
なにより2日ぶりのシャワーで案外気持ちよかった。


・・・・・


さて・・・
トイレである。


インドのトイレに紙は無い。


代わりにティーポット大のプラスチックのカップが置いてあった。
右手に水の入ったカップを持ち
その水を流しながら
左手で・・・拭くというシステムだ。
日本でもウォシュレットに馴染みの無かった俺だが
インドにて、手動ウォシュレットを初体験することになった・・・。



長旅で心身疲れ果てていた我々はシャワーとトイレを済ませた後
すぐに眠りに就く。



インド1日目にして俺の左手は


 不浄の手となった。



      
      つづく