第7章 IN CHENNAI 1


地獄のような19時間の乗り換え待ちを経て
我々はついにインドに降り立った。
今回旅の窓口に選んだのは
南インドのチェンナイという都市だった。


当たり前だが
飛行機から降りた瞬間から
そこはインドだった。
独特の匂いに独特の空気、独特の音・・・。


ん?あれ?


狭っ!?
驚くほど狭い。
ぱっと見、木造のようにも見える。
これが国際空港かと疑うほどしんみりとした小さな空港だった。


これ新宿のほうが全然でかいんじゃないの?とか思いつつ
JRの改札のような出口で3列に並びチェックなどを済ませ
少しだけ両替をして外に出た。


深夜だった。


にもかかわらず
いきなり大勢のインド人に囲まれる。
「タクシーッ?タクシーッ?!!」
「リクシャーッ?!リクシャーッ?!!」
「ホテェル?!チィープホテェル!!!」
皆口々に叫んでいる。
ある程度想像はしていたが
こいつはすごい。


ひとまず空港に隣接している交番(?)に避難することにした。
まるで準備無しで来た我々は
その日の宿を確保するため、ホテル街の場所を尋ねてみた。


が、通じない。
我々の英語は警察官にさえ通用しなかった。
なにを言っても笑いながら首を振られるばかりだ。
身振り手振りでしゃべり続け
やっと我々が宿を探していることが伝わってきたかなぁという時に
ふいにリクシャーワーラ−(リクシャーと呼ばれる客席付き3輪バイクの運転手。)が中に入ってきた。
そのリクシャーワーラーは持っていたホテルのパンフレットを広げ
「チープ!ヤスイ!!」を連発している。
警察官もニヤニヤしながら
「お前らめんどくせぇからそいつについていけば?」みたいな感じで促している。
インドでは交番内でも客引きOKなのか?
と思いながらも一刻も早く休みたかった我々はそのうさんくさい男についていった。


が、それも束の間、がたいのいい別の男がリクシャーワーラーにからんできた。
どうやらタクシードライバーらしい。
リクシャーワーラーとタクシードライバーの口論が始まった。


最初はお互い言い争っていたが
どうやらタクシードライバーのほうが強いらしい。
なにか叫んでリクシャーワーラーを突き飛ばすと、
リクシャーワーラーはぶつぶつつぶやきながら渋々去っていった。


そしてタクシードライバーがひと仕事終えたような顔で我々に一言。


「カモンッ!!ノープロブレムッ!!!」


どのへんがノープロブレムだ?!!
もういいや。やけくそだ。


我々はその男のタクシーに乗って安宿へ。



そしてインド1日目の夜が更けていった・・・。





      つづく