またインドに(略) その4


インド旅行記  


第16章 IN THE BUS,IN THE NIGHT


ひどい・・・。
たしか2等くらいの良いバスに乗っているはずだ・・・。
これが2等?というのが第一印象だ。


インド人はゴミをそこら中に捨てる。
バスの中も例外ではない。
床にはピーナッツの殻やバナナの皮が散乱している。


窓はちゃんと閉まらなかったり、窓自体無かったり。


まぁそれでも走り始めた直後はわくわくしていた。
なにせインドで初めてのバス移動だ。


しかし、10分もするとイライラしてくる。
道路がきれいに舗装されているわけも無く
揺れるわ揺れるわ。
たまにイスから腰が浮く。
もう乗っているだけで体力を使う。


極めつけは運転の豪快さ。
町中を走っているときはほんとにきつい。
牛やら人やらがうろうろしてる中を猛スピードで走る。
当然、人をひきそうになって急ブレーキで止まる。
そしてまたアクセルベタ踏みで再発進。
5秒後に牛を見つけて急ブレーキで止まる。
そしてまたアクセルベタ踏みでロケットスタート・・・。
徐行という言葉は無い。
その繰り返しで体は前後に揺らされっぱなしだ。
「ハハハー、中途半端は嫌いなのね、男らしぃー」
とかやけくそになっていると、
ふいに後ろの席のインド人が窓の外に顔を出しゲロを吐き出す。
インドのバスで1時間も持たず乗り物酔いするインド人。


ここらへんでイライラを通り越してゲンナリしてきた・・・。




こんな状態で4、5時間も走るとバスは休憩の為パーキングエリアに入った。
なんだこれは?
暗い。
日本でいうパーキングエリアとはまったく違った。
なにが入っているのか良くわからない倉庫だか廃工場のようなたくさんのプレハブの建物。
裸電球がつるされた食堂のようなもの。
同じく裸電球のキヨスクのような屋台。
周りは森。


なんか飯を食うような気分でもなかったのでとりあえず我々は屋台でチャイを頼んだ。


「ヘイッ!」
だれかに声をかけられる。
振り返るとビスケットオヤジ(仮)が手招きしている。
笑顔はない。
我々はおそるおそるビスケットオヤジ(仮)に近づいた。
するとビスケットオヤジはテーブルの上のビスケットを無言で我々の前に差し出した。
そして鋭い眼光でこちらを見ている。
怪しい・・・。
ガイドブックで読んだトラブル例が頭をよぎる。
我々がまごまごしているとビスケットオヤジが一言。


「ビスケット!!」


見りゃわかる。
相変わらずビスケットオヤジの顔に笑顔はない。
お礼を言い我々はビスケットをひとつづつもらった。
我々が食べ終わるとビスケットオヤジはまた無言でビスケットを差し出す。
そして少し間を置いて


「ビスケット!!」


そしてまた我々が食べ終わったのを確認すると


「ビスケット!!」


その後もしきりにビスケットを勧めてくるビスケットオヤジ。
怖ぇ・・・。
なんだ?これは何かの罠か?


このパーキングエリアでビスケットオヤジと交わした会話は「ビスケット!!」と「センキュー」のみ。
あんなにビスケットを勧められたことはかつてない。
そして終始ビスケットオヤジに笑顔は無い。



しばらくビスケットを食べ続けているうちにバスの出発時間になったので
我々は屋台で謎の小袋を買いバスに乗り込んだ。




そしてまたバスは走り出す。





   つづく