海外で読んだ本の話


普段、そんなに本を読むほうでもなく
最初のころの旅行(インド1、2回目およびインドネシア1、2回目)では
海外でガイドブック以外の本を読むなんて発想すら無かった。
ただ、最近ではわざわざ旅行にまで行って
本を読むというのは
実は結構贅沢な楽しみ方なのではないかと思っていたりもする。


てなわけで旅行中に読んだ本を
ネタバレしない程度に、あまり批評にならないように、晒す。



・「R62号の発明・鉛の卵」 安部 公房
表題作のR62号の発明、鉛の卵を含んだ短編集。
3度目のインドでO野峰が持ってきていたものを借読。
安部公房の作品は描写が細かく叙情的で最初非常に楽しいのだが
中盤あたりからそれが仇となって結構しんどい。個人的に。
その意味で安部公房の短編集ってのは俺にあってる気がする。


・「深い河」 遠藤 周作
深い河、ガンガー(ガンジス河)に焦点をあてた作品。
4度目のインドで、インドで読む本には何が良いかと悩んで持っていった一冊。
老若男女5人の「主人公」が
それぞれの事情とそれぞれの想いを抱えて訪れるインド。
「転生」、「宗教」、「愛」、「死」などをテーマに
その5人の感情が、葛藤が、インドと、そして深い河と共に流れていく。
キリスト教のイメージがある遠藤周作だが
キリスト教だけにとどまらず、「信仰」、「宗教」の捉え方、考え方について
再考させられるような、新たなことに気づかされるような
そんな読んだ後に充足感、満足感が押し寄せてきた一冊だった。
ボリュームもちょうど良く、いままで読んだ小説のなかで
ベスト3に入るほど好きな一冊。
なお、内容と旅行当時のインドの情景が重なり
日本で再度読み返すのが現状、躊躇われている。


・「青年は荒野をめざす」 五木 寛之
4度目のインドでU君が持ってきた一冊。
表題のとおり青年が旅する物語。
トランペット片手にシベリアから北欧まで。
当てのない旅、ジャズ、ドラッグ、恋、酒と、
まさに青春群像。
さらさら読めるし楽しい。
願わくば「ノルウェーの森」等と同じく
10代のうちに出会いたかった一冊。


・「ぼくと1ルピーの神様」 ヴィカス・スワラップ
4度目のインドでナベタクが持ってきた一冊。
映画「スラムドッグ・ミリオネア」の原作。
たまたま映画公開より先に、しかもインドで読むことになったのだが
ダニー・ボイルが目を付けるほどコンセプトが面白い一冊。
内容は映画とは若干異なり、最高のエンターテイメントである映画版と比べ
淡々と物語が進んでいく印象。
これが舞台がアメリカとかヨーロッパだとなんでもない作品なのだろうが
インドのいろいろ細かい部分が混ぜ込まれているので
旅行中に読んでいて実に面白かった。


・「姑獲鳥の夏 」 京極 夏彦
広州、広西チワン族自治区を回った南中国旅行に持っていった一冊。
インドに「深い河」を持っていったので
中国っぽくて荷物にならない程度のボリュームの本を探していて
姑獲鳥(コカクチョウ)が中国の妖怪だということで決定。(表題の読みは姑獲鳥と書いて「ウブメ」)
京極 夏彦の作品は「魍魎の匣」から入ったのだが、どれも面白い。
その中でも「姑獲鳥の夏 」は京極作品のなかでもボリュームが少なく
入門編としてお勧め。
内容は、妖怪(民俗学)と認識論とうつ病の話。



こんなん書いてると
また旅行に行きたくなってきた・・・。