第29章 IN AGRA 3


アグラーの朝、
我々とバンディとバンディの友達(名前聞いたけど長くて難しかったので忘れた)は
とりあえず昨日予約した鉄道の予約状況を確認するために駅へ向かうことにした。
この時期、インド全土をあげてのお祭り『ホーリー』があるため
鉄道はすさまじく混むらしい。


宿を出て、停めてあったバンディのリクシャーに乗り込もうとすると
バンディがうれしそうに我々に声をかける。
「ちがうちがう。今日僕たちが乗るのはそれじゃない。あれだ!」


指差した先にあったのは


タクシー。


得意そうに車のキーを指でくるくる回すバンディの友達。
こいつ個人タクシーの運転手か!
相当なボンボンに違いない。


我々はエアコンの効いたタクシーに乗り込み駅に向かう。


タクシーの中のBGMはなんとMISIA
「I LOVE MISIA!!」
と、日本語だかなんだかわからん言語でテープにあわせてMISIAを歌うバンディの友達。
インドに来てまでMISIAを聞くとは思わなかった・・・。



MISIAの曲が1曲終わるころ駅に到着。
するとバンディがタクシーの外に出る。
「僕が予約状況を見てくるから君達はゆっくりしててくれ。」



5分ほどして戻ってきたバンディ。
「だめだ。あと100数人は予約待ちらしい。明日また見に来よう。」


こういうのは絶対に自分達で確認するほうが良いのだが
もともとアグラーに何日か滞在するつもりだった我々は
まぁいっか、とバンディの言葉を信じることにした。



さて、用も済ましたしとりあえず宿に戻ろうかと思ったが、
バンディの友達は一向に車を動かそうとしない。
ふいにバンディの友達が窓の外を指差した。
「おい、あそこを見ろ。日本人の女の子だ!お前らあの子をここに連れて来い!!」


確かに指差した先には
今、アグラーについたばかりらしいガイドブックを広げた日本人の女の子2人組がいる。


「え〜、やだよ、めんどくせー。それに俺達シャイだし。」


すると今度は下手に出て真剣にお願いしだすバンディの友達。
「頼むよ〜。お前らもインド人の女性は綺麗だと思うだろ?
それと同じで俺にとって日本人の女の子はすごく魅力的なんだ!
あの娘達とどーーーしても話がしたいんだ!
頼むよ〜。お願いだ〜。俺達友達だろ〜?」



う〜〜〜ん・・・しょうがねぇなぁ〜ということで、
我々は車を降り、女の子達に声をかける。
まぁ半分以上は
インドで日本人を客引き!!
それってちょっとおもしろくねぇ?!
というノリの悪ふざけだったが。


「こんにちはー。」
我々が、すごく安くて安心できる宿があって、すごく信頼できるインド人の友達がいる
という胡散臭い話をすると女の子達は案外あっさりついてきた。
インドでは不思議なもので日本にいたらまず接点がないだろうなぁという人達とも男女問わずすぐに仲良くなれる。
インドに来ているだけでこいつなかなかやるな、みたいな妙な親近感が(特にビギナーの旅行者には)あるのだろうか。


日本人の女の子を連れバンディの友達の車で宿に戻る。
女の子達はバンディお勧めの宿にまんまとチェックイン。
バンディの友達は必死に日本人の女の子を誘い
後でアグラー城を案内する約束にこぎつけたようだ。



バンディ達が日本人の女の子2人とアグラー城に行くまではまだ時間がある。
それまでの時間つぶしといった感じでバンディが我々に声をかけてきた。
「今から僕の友達を紹介するよ。行こう。」


バンディとバンディの友達に連れられ我々は車でそのもう1人の友達の家へ。


こういうのもおもしろいかなぁと思っていたが
到着したのは怪しい宝石屋。


奥から背の高い人の良さそうな青年が出てきた。
「ハロー。ナイストゥーミーチュー!!」


ちっ、こいつもボンボンか。


我々が、店に入るとふいに店のシャッターを閉め始める宝石屋の息子。


シャッターを閉め終わり振り返って笑顔で一言。
「今日はせっかく友達が来たから店じまいだ。」


え?友達来たら店閉めちゃうの?!


胡散臭さ大幅UP。


その後居間のようなところに通されバンディ達とくっちゃべってると
宝石屋の息子がチャーイを持ってきた。



まさか睡眠薬チャイ?!!


「飲みなよ。」
しきりにチャーイを薦めるバンディ。


えー、こういうのって危ないから絶対飲むなって言ったのバンディじゃぁん・・・。


場の空気的に飲まないわけにもいかず
やけくそでチャーイをすする我々。



チャーイを飲み終わるとなぜか始まったインドVS日本の腕相撲大会。


1回戦は俺VSバンディ、M上VSバンディの友達。


なんとかバンディは下したが、M上はバンディの友達に負けてしまった。


「さぁ、ファイナルだ!!」
妙に興奮しているバンディの友達。


こいつ腕すげぇ太いんですけど・・・。


M上が歯が立たないのに俺が勝てるはずもない。
勝負中ニヤニヤ挑発してくるバンディの友達。
「ヘイ、カモンッ!!」


このやろう・・・。



バンディの友達が俺にも圧勝し、インドVS日本の試合はインドの勝利で幕を閉じた。
腕相撲を終え、日本人女の子と待ち合わせの時間なのだろうか、ソワソワしだすバンディ達。


「そろそろ戻ろうか?」


「明日はうちでインドのエロビデオを見よう!!明日も店は閉めるから!」
働けよ・・・。
妙に笑顔の多い宝石屋の息子に別れを告げ我々は宿に戻る。



宿のフロントに着いたときに階段の上から少し年上っぽい日本人が下りてきた。


「ハロー!バンディ。」
どうやらバンディとは顔見知りのようだ。
「彼とは昨日友達になったんだ。」
説明するバンディ。


さらに階段の上から年上日本人の連れも下りてきた。




・・・!!!


ブ○ームオブユースだ!!!



我々は眼を見合わせた。
その連れは、知る人ぞ知るあの伝説のシベリア横断デュオの片割れにそっくりなのである!!




・・・まぁ、そっくりなだけなんだけどね。




       つづく