第27章 IN AGRA


旅はついに北インド


列車はアーグラーに到着。
またもや到着したのは夜明け前。


詐欺・強盗が蔓延し、
アショカやインドールの宿のスタッフでさえ
あの町では気をつけたほうが良い
と言わしめたアーグラーだけに、
我々はこの時間に町をうろついて宿を探すのは危険と判断。
そして、駅構内にリタイアリングルーム(旅行者の為の簡易宿泊施設)を発見。
夜が明けるまでそこに泊まることにした。


リタイアリングルームは10数個のベッドが並ぶだけのドミトリー(大部屋)だった。
宿泊客はほとんど眠りに就いており部屋は真っ暗である。
長旅で疲れていた我々もすぐに眠りに就く。




――2時間後――


ガンガンガンガンガンガン!!!!!


「モーニンッ!!!モーーニンッ!!!」


ガンガンガンガン・・・!!!



うおっ?!な、なんじゃい?!!


すさまじい音で目が覚める。


なにやら小太りの従業員が鍋のようなものを打ち鳴らし
宿泊客を起こして回っている。
この起こし方の酷さは修学旅行の比ではない。



ほとんど寝た気もせず、水シャワーとトイレを済まし
リタイアリングルームを後にする。


まだ夜が明けたばかり。


我々はこの旅で初めてプリペイドリクシャーを使うことにした。
リクシャーワーラーとの直接料金交渉ではなく
あらかじめプリペイドリクシャーの会社に料金を払っておくので
インドでは定番のリクシャートラブルが少ない。



さて、我々はプリペイドリクシャーのカウンターで料金を払い
引換券のような紙切れをもらい駅の外に出た。



駅の外は
これでもかと言うほどのリクシャーやタクシーで溢れかえっている。
さすがタージマハルを誇る大観光地アグラーだ。


あー、この中から紙切れに書いてある番号のリクシャーを探すのね・・・。


と思っていた矢先、
ふいにインド人青年に声をかけられる。


「ハロー!君達、何処へ行くんだ?」


リクシャーワーラーだ。


こういう客引きが面倒くさくてわざわざプリペイドリクシャーにしたのだ。
「あー、大丈夫。俺たちこれからプリペイドリクシャーに乗るから。」


「なんだって?ちょっとそれを見せてくれ!」
青年は半ば強引に我々から紙切れを奪い
書いてある内容を確認。


そして今度は自分のポケットからなにやらカードを取り出し、
紙切れと見比べだした。



・・・・・



「イッツ、ミー!!!これ、俺のリクシャーだよ!!!」





・・・うそくせ〜〜〜。




青年の名はバンディー。






      つづく