第20章 AT THE TOILET


バスがゴアを出発した。次の目的地プネーまではおよそ12時間。
たぶん当たり前のように遅れて14、5時間はかかるだろう。
腹の調子はすこぶる悪い。
もちろん体もだるい。
えぇ、まさに地獄ですとも。
相変わらず急発進&急停車を繰り返すバス。
相変わらず暑がりなインド人のせいで窓は開けっ放し。
リクライニングシートなんてとんでもない。イスは木製、普通に座っただけで膝が前の席にあたる。
途中休憩は真っ暗な森の中で。


そして驚くべきことに立ちの人間がいる!!
つり革に絡みつくようにして立ち、バスの揺れに合わせてブラブラと前後左右に回る初老の男。
目はずっと閉じたままだ。
・・・あれ、死んでんじゃねぇか?


さすがに立ちの人間は1、2時間もすれば途中のバス停で降りていったが
それでもたいしたもんだと思った。


その後、揺られに揺られ今回もほとんど寝れないまま早朝、プネーに到着。


さわやかな朝のバス停のはずだろうが、
限界寸前の俺はM上に荷物を預けてトイレに直行。
バス停のトイレはインド人でごったがえしていた。
木造のドアが4つ。
そのドアの前にそれぞれ3、4人のインド人が並んでいる。
後ろには大きな流し台があり蛇口から絶え間なく水が流れ、
当然それを受けるバケツは水で溢れかえっていた。
バケツが置いてある意味はまったくわからなかったが
その傍にあったプラスチックのカップの意味はすぐにわかった。
汚れたカップに水を汲み、右手に持って列に並ぶ。
例の如く当たり前のように列に割り込んでくるインド人にイライラしつつも
やっとのことで個室に突入。


床が汚いとか、ドアに鍵がかからないくらいはまぁ予想がついた・・・
が、入った瞬間目についたものにげんなり。
便器の中には前のインド人が出したモノがまるまる残っている・・・。


・・・流せよっ!!
思わぬアクシデントでカップの中の貴重な水を3分の1ほど使ってしまう。


さて、前の人の忘れ物を流し終え、いざ腰を降ろそうとするが
どうにもドアが不安定で上手く閉まらない。


仕方が無いので右手でドアを押さえながら腰を降ろす。


さてやっとのことで・・・と一息ついたのも束の間


ドンドンドンドン!!


今度はドアが強烈にノックされだす。


いや、入ってるから!!!
つうかお前、俺の後に並んでたんだから俺が入ってるの知ってるだろっ!!!
もう少し待ってろ!!



・・・・・


せっかちなインド人にせかされながらなんとか用を足したが、今度はもうひとつの問題が。


・・・やべぇ、右手がふさがってる。


右手はドアから離すわけにはいかない。
ドアが少しでも開けば、ノック男はかまわず突入してきそうな勢いだ。


やるしかねぇ・・・。


この極限状態の中で
俺は「左手」でカップの水を流しながら、「左手」で拭くという荒技を開発!
意外と俺って器用だなとひとりで感心。
そして最後に自分が出したモノをカップの残りの水で流して完了!


悠然とトイレをあとにする。


・・・長い戦いだった・・・。
このアホな戦いにかれこれ30分。
あまりに帰りが遅いのでM上に「拉致されたかと思った。」と言われたほどだ。



とにもかくにもプネーに到着。



・・・とりあえず今日の宿だな。





     つづく