第10章 IN CHENNAI 4


ついにリクシャーが走り出す。
客席は荷物を抱えた我々2人で一杯ぐらいの広さだ。
で、
そんな我々の横を他のリクシャーがすれ違っていく。
近っ!
近い。
驚くほど車間が狭い。
ほんとに手が届くほど、30センチぐらいの距離だ。
1車線に3、4台のリクシャーが並び
さらにそこにタクシーが並んでくる。
前後の車間も驚くほど狭い。
追い抜き、追い抜かれの連続。
ラクションは鳴らしっぱなし。
リクシャーワーラーは運転中興奮しっぱなし。


そんな意味のわからん混雑とスリルの中、
我々を乗せたリクシャーは
チェンナイ・セントラル駅に到着した。



インドの駅は不思議な空間だ。
食事をとったり(その場で自炊!!)、睡眠をとったり、モノを売ったり、客引きをしたり・・・
皆おもいおもいの「生活」をしている。
そんななか我々も長蛇の列に並び
電車のチケットを取った後
外に出て昼食をとることにした。


駅の近くの砂埃の舞う砂利道沿いにあった
地元の人達で賑わう店に入る。
ドアや窓など無い
開放的な大衆食堂(良く言えばオープンカフェ?)だ。


空いている席に座ると
店員が寄ってきた。


フライドライス(要するに焼飯)を注文するM上。
しかしどうにも上手く伝わっていないようだ。
何度か説明をすると、
店員は、「OK、OK。」と言い店の奥に消えていく。


程なく店員がなにやら大きな葉っぱを抱えて戻ってきた。


バナナの葉だ!
店員はそのバナナの葉を我々のテーブルに勢いよく敷く。
そしてそのバナナの葉にチョロッと水をかけて手で軽くなでる。
「えっ?!それで洗ってるつもりなの??!」
と、思ったのも束の間
バナナの葉を皿代わりに上から大量の米が落とされた。
ご飯を「よそう」とか「つぐ」とかいう表現はあてはまらない。
まさにご飯を「落とす」という感じだった。
さらにその上にカレーがぶっ掛けられた。


・・・いゃ、全然フライドライスじゃないじゃぁん・・・。
とか思ったが、周りを見渡すと皆これを食っている。
どうやらこの店にはメニューなど無いようだ。
そして最後に、コンビニとかでプリンを買ったときに付いてくる
プラスチックのちっちゃいスプーンが渡された。


外国人だからという配慮なのだろうが
これで食うのもなぁ・・・と戸惑っていると
隣の席の親父が手で食うことを勧めてきた。


郷に入りては郷に従えということで我々も手で食ってみることにする。
もちろん「右手のみ」だ!(俺の左手は前日のトイレで既に不浄の手となっている)


右手の中指、人差し指、薬指に米とカレーを乗せ、
親指で押し出すようにしてうまく口に運ぶ。


・・・うまいっ!!
恐ろしく辛いが
味覚、視覚、嗅覚だけでなく
触覚でも料理を楽しめるのだからうまいはずである。
隣の親父も我々を見て大はしゃぎだ。


怪しい付け合わせにも手を出しつつ
食べ続けていると
ご飯が半分くらいになったところで
また上から米とカレーが大量に落とされる。
お客さんが腹いっぱいになるまで
いくらでも食べさせるらしい。



大満足の食事をとっていざ会計へ。


店員に代金を聞いてみる。


「ハウ・マッチ??」


すると店員は右斜め上の空間を少し見て
一瞬考えた後・・・


「・・・15ルピー!!」


え"っ??
今何を計算したんだ??!
皆に同じメニューを出しているのに??!!



少々ボラレた感はあったが
インド1食目は大満足であった。





     つづく