第4章 ― コラートへ ―


「バスステーションに行ってくれ。」


シー・アユタヤー通りでタクシーを捕まえた。
運転手はチャラい白メガネをかけた若い男。


「オーケー。」と愛想笑いを浮かべ
運転手はアクセルを踏む。


タクシーは走り出したが
タクシーメーターはまったく動かない。
そもそもスイッチが入っていない。


「メーター動いてないよ。」


メーターを指差し指摘するも
「バスステーションに行けばOKダッタヨナ?」
とはぐらかされる。


なるほど・・・これはアレだ。
インドとかでよくあるメーター回さずに
あとで感覚値でぼったくるあの手口だ。


「メーターを回してくれ。」


「バスステーションからはドコ行くんだ?」


「コラートだ。
 メーター動いてないよ。」


「オー、コラート!
 コラートはベリーグッドなところだ。」


「あぁそう。
 メーターのスイッチを入れたほうが良いと思うよ。」


「コラート。・・・コラートはバンコクから250キロ離れている。」


「へぇ。そうなんだ。
 どうでもいいけどメーター動かさんのなら金払わんけんね。」


「・・・オー、メーター!
 ワスレテタワスレテタ。
 オーケーオーケー、メーターね。」


白々しい・・・。
ここでやっとメーターにスイッチが入る。



それから軽く渋滞に巻き込まれ30分。
タクシーはバスステーションに到着した。


バンコク北バスターミナル、モーチット・マイは
相当な広さだった。
しかも清潔というか、インドのバスステーションとはだいぶ雰囲気が違っていた。
売店はもちろん、コンビニ、フードコートもある。
芳ばしい香りがフードコートから漂ってきたので
軽く何かを食べようかと思ったが
チケットを予約した時点で15分後にバスが出るという。
トイレ、エアコン付きの1等バスで
200バーツ弱。
4時間ほどの距離とはいえ、安い。
バスターミナルも整備されているし
バスの本数も多い。
タイはかなりバス網が発達しているのかもしれない。



コンビニでペットボトルのジュースを買って
バスに乗り込む。
タイ2番目の目的地は
ナコーン・ラーチャシーマー、通称コラート。
まずは、北へ。




つづく