インド長距離バス、その地獄


インドで最もキツイもの
それは深夜長距離バスではなかろうか。


いつの時期でも割かし列車が込んでいるインド
特に南インドでは
列車よりも予約が取りやすく
なおかつ安い長距離バスを迂闊に利用してしまいがちである。


バスのクラスは
デラックス、セミデラックス、ローカルという風に分かれており
我々が最初のインド旅行で初めにバンガロールからゴアまで利用したのは
セミデラックスクラスのバス。


まずバスが砂埃を巻き上げ
バス乗り場に入ってきたときから
テンションは下がる。
塗装の剥がれたさび付いた車体。
乗るまでもなく容易に感じ取れる走行の安定の無さ。
セミとは言えどこにデラックスな要素があるのだろう。


バスに乗り込めば
不安は恐怖に変わる。
床に散らばるバナナの皮やピーナッツの殻。
リクライニングなどするわけも無い木の硬い座席。
座席に座れば前の座席の背に膝が当たる狭さ。
窓は完全に閉まらない。
そして深夜長距離バスのはずなのになぜ吊革が?!
なぜ立ちの客が?!!


運転手は徐行という技術を覚えていない。
街中だろうが
アクセルベタ踏みで発進。
リクシャーにぶつかりそうになり急ブレーキ。
またベタ踏みで発進。
牛にぶつかりそうになり急ブレーキ。
そして性懲りも無くまたベタ踏みで発進。
そのたびに前後左右に揺さぶられる身体。
サスペンションも機能しておらず
舗装されていないインドの田舎道でバスが跳ねる。
俺も跳ねる。
時には天井に頭をぶつける。
そして後ろの席ではバス酔いしたインド人が窓から嘔吐。
なんのアトラクションだ?!これは!!!


無理やり寝てしまおうと思うものの
車体の揺れと
閉じきらない窓から容赦なく吹き込んでくる風に
否応無く体力を削られる。


俺は疲労から
生まれて初めてバスで鼻血を出した。


一度目の食事休憩は
巨大なプレハブの倉庫が並ぶ
日本の高速サービスエリアとはまったく別物の山の中の広場。
裸電球を灯した売店と簡易食堂が2店舗並ぶのみ。


途中のトイレ休憩は
ただの森の中。
漆黒の闇。


下痢をわずらっていた俺は
ここでまたも生まれて初めての野○ソ。
三寸先は闇とはよく言ったものだ。
自分の立ち位置すら良くわからなくなる。
闇にこだまするのは木々のざわめきと
聞いたことも無い動物の鳴き声。


泣きたくなった。



インドの旅はやはり列車がいい。


なにせトイレがついているんだもの。