chapter12 マッドロブスター

インドネシアのバリ島で
日本のCMでお馴染み
レ〜〜〜ッドロブスタ〜♪
ならぬ
マッドロブスターという店を発見。


直訳すると『凶暴なロブスター』『気が狂ったロブスター』『不合理なロブスター』
・・・行きたくねぇな・・・怖ぇ。


でもそういえばロブスターって食ったことねぇな。
という興味も沸いてきた。


2度目のインドネシア
その贅沢旅行の最中
I島と俺は同じ部屋だった。


ある朝、俺とI島とで極秘会議が開かれる。


「あれっ?M上とKカベは?」


「あーー、あいつらならプール行ったぜ。」


「またプールかよ!あいつら海外に来てまでなんでプール三昧なんだ?
 夏休みの小学生か?!」


「・・・おい、あいつらがプールでうつつを抜かしている間に
 俺たちはなんかバリ島っぽいことしようぜ?!」


「おぅ!!そうだなぁ・・・どうせならあいつらが後で悔しがるようなことしてぇな。」


「・・・それじゃぁさぁ!西のほうにジンバランっていう漁村があるから
 そこに漁れたてのロブスター食いに行かねぇ?!
 マッドじゃないやつ。」


「いいねぇ!!ロブスターなんて普段食わないもんな!!
 マッドじゃないやつ。」


「おし!!じゃぁあいつらに内緒でこっそりジンバランに
 ロブスター食いに行こうぜ!!
 マッドじゃないやつ。」


そして我々はホテルの前のタクシーの運ちゃんと
交渉し、タクシーをチャーター。


なんせ贅沢旅行。
乗り合いワゴンなんて乗らんのだ。


ちょこちょこ島を観光し
目的のジンバランに到着。


照りつける強烈な陽射しの中
海の家のような家屋やテント、屋台が立ち並び
彼方に水平線を臨む真っ白い砂浜が広がっている。


数々の客引きをあしらい
我々は適当な店の前で立ち止まる。


店の前の水槽の中には
いるわいるわロブスター。
活きがいいというか普通に今も生きている。


水槽を覗いていると
「ヘイ?ジャパニ!カモン!!」
待ってましたとばかりに店のおっちゃん。


ここにするか。
「ハウマッチ?」
ロブスターを指差しながら尋ねてみる。


「350000ルピア!!カモン!!」


・・・1.5倍ふっかけってとこか。


「高いなぁ。ディスカウントできねぇ?」


「昨日天気が悪かったから今この辺でロブスターが不足してるんだ。
 どこ行ってもこんなもんだ。」


「いやぁそれにしても高すぎるでしょう。」


そこから交渉が始まり220000ルピアで合意。


「うーーーん・・・オッケーだ!!
 それじゃ今からこのとびっきりのロブスターを捌いてやるから
 席で待っててくれ!」


そう言うとオヤジは
水槽の横にあった発泡スチロールの箱の中から
氷漬けにされたロブスターを取り出し
調理場へ消えていった。


えーーーー!?そこの水槽の中のやつじゃねぇの?!


水槽の中のロブスターは思いっきり客引き用らしい。


釈然としなかったが
まぁあれもあれで新鮮なロブスターなんだろうということで
我々は席に座り
バリハイビールをオーダー。


程なくビールと一緒に料理も運ばれてきた。
ライス・・・付け合せ・・・カンクン菜炒め・・・
おかしな色の貝・・・エビ・・・カラフルな魚・・・。


「え、こんなの頼んでないぜ?」


にやりと笑うオヤジ。
「サービスだサービス!!ガハハハ・・・!!」


いや、ロブスターをもっとまけてくれよ・・・。



しかし悔しいかな、うまい!!


新鮮な魚介類と
インドネシア独特の甘辛い味付けのおかげで
ビールがご飯が進む進む。


ロブスター無しでも満足の味だったが
その後、満を持してロブスター登場!!


これもうまい!!


確かに雑な味だ。
でも雑OK!!
灼熱のバリとビールにベストマッチ!!


2時間近くかけて
腹いっぱい!!
大満足のロブスター体験だった。



帰りのタクシーで
運ちゃんがショッキングな一言。


「え?!おまえらロブスターに220000も払ったの?!
 俺が知ってる店だったら160000で食えたのに。 
 バカだなぁ・・・。」



い、いや、あ、あの体験は・・・プライスレスですから〜!!