chapter8 ホテル事情3


1度目の旅行のとき
最後に滞在した町はバリ島のウブドだった。

ロビナから俺・O野峰・U君の3人は
乗り合いシャトルバスに乗ってウブドへ。

途中山奥でシャトルバスが故障してしまうアクシデントがあったものの
無事ウブドに到着。


さてまずは今日の宿を探すことからだ。


バリと言えばロスメン


ロスメンとは
ホームステイの延長のような「安宿」のことらしい。
バリ島の家屋は敷地の中にいくつかの部屋がそれぞれ独立して建てられていて
そのうちの空いている部屋をお客さんに提供するんだそうだ。

ホテルのようなサービスはなく
自分のことは自分でと言うスタイルらしいが
そのぶん料金は安く
なによりうれしいのが朝食つき!!


我々はガイドブックに乗っていた
笑顔の眩しいフレンドリーなおばちゃんが待つというロスメンへ向かう。
ガイドブックの写真では満面の笑みを浮かべているおばちゃん。


目的に宿はすぐに見つかった。


たくさんの木々が茂る庭を持つ
なかなか良い雰囲気の宿だった。


部屋数は全部で3、4部屋のようだ。


奥のほうからガイドブックに載っていたおばちゃんが出てきた。


「部屋を見たいんだけど?」
極限まで素敵な笑顔を作って
おばちゃんに話しかけるO野峰。
うーむ、さすがは来年から社会人だ。


しかし、
「・・・ん。」
と、我々を一瞥して一言うなづき
部屋のほうに向かうおばちゃん。


あれ?
ガイドブックの情報と異なり全くもって無愛想なおばちゃん。


「・・・おい、話違くねえか・・・?」


「・・・確かに。全然フレンドリーじゃねぇんだけど・・・。」


「・・・まだ1回も笑顔見せてないぜ・・・。」


そのままおばちゃんに案内されて
部屋へ。


セミダブルぐらいのベッドが2つ。
どうやら3人のうちの2人は同じベッドで寝ることになりそうだ。


そしてトイレと一緒のバスルーム。
もちろん水シャワー。
これでこの旅行全日程での水シャワーが決定。


俺は疲れが取れる気がしない水シャワーというのが
ひどく嫌いなのだが
水シャワーにも1点だけ良いところがある。


それは「感電しない」ということだ。


経験上
インドやインドネシアの安宿のホットシャワーは
思いのほか漏電していて
蛇口をひねるときなど
軽く感電することが多い。


部屋は可もなく不可もなく
料金の安さと
メインの通りに近い立地条件、
なにより朝食付きというのが
決め手でそこに泊まることにした。


「あ、じゃぁこの部屋に泊まります!」


O野峰精一杯の作り笑顔だったはずだ。


「・・・ん。」


一言頷くだけで
我々に鍵を渡し自分の部屋に帰ろうとするおばちゃん。


ガイドブックに乗っていた
最高の笑顔を一目見ようと
粘るO野峰。


「僕らと一緒に写真撮らせてくれませんか?!」


すかさずカバンからカメラを取り出す。


おばちゃんはそんな我々を一瞥し
「・・・んん。」
と首を振り、去っていった。



え?!写真も拒否・・・。