chapter5 Is there Dolphins ? 前編


我々はスラバヤという町からバスごとフェリーに乗り
バリ島に渡った。

体調は全然良くなっていない。
相変わらず俺、U君、O野峰とも下痢と微熱を患っている状態だ。


しかし、これが格安航空券での旅行の怖さで
ジャワ島のジャカルタから入国した我々は
体調が悪かろうが何だろうが
入国から8日後にはバリ島のデンパサール空港に到着してなくてはならない。
日本でチケットを買ったときから
帰りの飛行機は既に決まっているのだ。


ソロで3日もぐだぐだしてしまった我々は
そろそろ前に進まなくてはということで
あれほど嫌がっていた深夜バスに乗った。



1番先にぶっ倒れたせいか
1番先に回復しつつある
目下赤丸急上昇中のO野峰。


1度は回復したと思い込み
もはや免疫は出来た!と
淡い幻想を抱いて暴飲暴食を繰り返し
再度体調を悪化させた俺。


下痢と発熱を患ったまま
フェリーの中で誕生日を迎えてしまう
悲しすぎるU君。


そんな3人もついにバリ島に上陸。


さて、どうせなら北のほうから回っていこうということになり
我々は大型バスから乗り合いワゴンに乗り換えロビナという町に向かう。


30分ほどバリの田舎町を走りぬけ
ロビナにある停留所のひとつに到着。


体調不良で宿を探すのも面倒だったため
停留所の近くにあったロスメン(安宿)に入る。


「いくら?」


宿の従業員に尋ねると
ダブルルームで30000ルピア
トリプルルームで40000ルピア。
1円≒100ルピアぐらいだから一人100円ちょっと。
安い!


従業員に部屋を見せてもらう。


部屋にはベッドが2つ。


どう見てもダブルベッドルームなんですけど。


「これはダブルルーム?」


「ノー。ウェイト!」


そこへ汚いマットレスを持ってきて
トリプルベッドルーム!と言い切る従業員。


ボロボロのマットレスをひとつ追加しただけで
宿代が上がると言うのは
釈然としなかったが
それでもそこそこの安さだったのでここに泊まることにした。
なによりこの体調で別の宿を探すのが面倒だったのだ。



ガイドブックにも乗っていないような宿だったが
相変わらずの水シャワーであることを除けば
なかなか快適だった。


屋上に行けば壊れかかった木のテーブルとイスがあり
心地よい風が吹く中
胃腸の調子を整えるため大量に買い込んだヤクルトで1杯やれる。


宿の裏には広大な田畑が連なり
その向こうには緑の高い山がそびえるなかなかの景色だ。
反対側には海も見える。


夜天井の電球に集まるヤモリも
なかなか見ていて飽きない。



「おい、おまえら出かけないのか?ロビナは良い町だぞ?!」


と、1日中宿の屋上でダラダラしている我々を
宿の従業員がこいつらこの町に何しに来たんだ?と心配して
声をかけて来たごろ
O野峰がある提案をした。


「イルカ・ウォッチングができるらしいぜ!」


「へぇ・・・。」


どうやら宿の従業員に
ロビナ名物イルカウォッチングを勧められたらしい。
早朝ボートに乗って海に出てイルカの群れを見るというものだ。



ジャワ島ではブロモ山や世界遺産であるボロブドゥール寺院遺跡群などの
観光地全てを見事にスルー。


あまりにも旅行っぽくないということで
無理やり思い出作りの一環として
このイルカ・ウオッチングに参加したいらしい。


全く持って忘れていたがこれは卒業旅行なのだ。


「うーーん、良いかもね・・・。」


しかし体調が良くないせいか
俺もU君もノリノリというわけではなく
若干あいまいな感じだ。


なにせ海上で下痢状態なんて
想像しただけでやばすぎる。


あきらかに回復傾向にあるO野峰と
俺&U君との間にはテンションの開きがあったのだが・・・。


「よし!じゃぁ早速申し込んでくるわ!!」


いち早く体調を回復しつつあるO野峰がハッスル。


驚くべき行動力で
ものの2分でイルカ・ウォッチングツアーを申し込んできてしまった。


「明日、朝5時集合だってよ!!」


え!?


・・・俺まだ全然体調良くないんですけど・・・。




    つづく