第28章 IN AGRA 2


・・・胡散臭い。


駅から出てくる旅行者がたくさんいて


その中の2人が我々で


駅にたまっているリクシャワーラーもたくさんいて


その中の1人がバンディで


偶然話してみると実は予約したリクシャーだった。


そんなんってあるのか?


予約したときにプリペイドリクシャーの会社からバンディに連絡が行き
日本人2人が駅から出てくるのを待っていたのだろうか?



まぁ何でもいいや。
市内まで一定料金で行ければ問題ないし
とりあえず長距離移動の疲れで非常に眠い。
なにより、インドで胡散臭いことをいちいち気にしてたらキリが無い。


我々はバンディのリクシャーで安宿街に向かう。



5分ほど走り、バンディは路肩にリクシャーを停めた。


「君達、アグラーに来るのは何回目?」


リクシャーワーラーは話の種として最初に決まってこういう質問をしてくる。
我々は、インドに来たのは初めてであること、
当然アグラーに来たのも初めてであること、
チェンナイからインドに入って北上してきたことなどを話した。


「そうか・・・」
急に神妙な顔つきになるバンディ。


「OK?よく聞いて。アグラ イズ ベリベリ デンジャラスシティー!」


バンディが言うには、ここアグラーでは
リクシャー強盗(リクシャーに乗ってるといつの間にやら人気の無いところに連れて行かれて金とられちゃうヨ。)や、
睡眠薬強盗(地元民っぽい人とちょっと仲良くなって一緒に飯食いに行ったりすると飯や飲み物に睡眠薬入れられて金とられちゃうヨ。)
が非常に多く
中には、医者とホテルがグル(ホテルのレストランで食事をすると飯に下剤入れられて医者を紹介されるけど法外な治療費とられちゃうヨ。)
というのもあるそうだ。


まぁ、ガイドブックに乗ってるようなことばかりだけど
気をつけないとな・・・。


なおも真剣な顔で続けるバンディ。


「だから僕がいまから君達を信用できるホテルに連れて行く!
飯もそのホテルのレストラン以外で食っちゃダメだ。危ないから!」


・・・話がおかしくなってきた。
こいつも他のリクシャーワーラーと同じくコミッション(ホテルへの紹介料)目当てか?!


どうする?
我々が相談し始め出すと
バンディは一冊のノートを我々に差し出した。
ノートには
「バンディさんはとてもいい人です。」
「バンディと出会えたおかげで素晴らしい思い出ができた!」
「インドのリクシャーワーラーは大嫌いだったけどバンディは全然違いました。」
といったバンディ大推薦文が日本語でたくさん書かれている。


さらに真剣になるバンディ。


「僕は欧米人は横柄で嫌いだけど日本人はやさしいから大好きだ。
このノートも友達になったたくさんの日本人が書いてくれたものだ。
旅先で困っている日本人の力になりたい。
僕は君達を信じるから、君達も僕を信じてくれ!
ホテルも安いから!」


アショカもそうだったが何人かのリクシャーワーラーはこういう類のノートを持っている。
日本人の客を安心させるためだろうが
逆に胡散臭い。
つうか書かないでしょ。普通。
仲良くなっても。


まぁいっか。
とりあえず我々はバンディのお奨め宿に行ってみることにする。
部屋見るだけでもいいし。
眠いし。
バンディの英語が聞き取りやすいことも好印象だ。


宿に到着すると恰幅のいいオーナーらしきオヤジが出迎えてくれた。
「ハロー。うちは日本人大歓迎だ!このホテルは来年日本の有名なガイドブックにも乗る予定だから安心して泊まりなさい。」


いかにもな胡散臭さだがとりあえず部屋を見る。
トイレ・シャワー・ファン付きでダブルルーム1泊200ルピー。
悪くない。
南インドに比べると宿泊費は全然安い。


「OK。」
我々はこの宿に泊まることにした。
飯は外で食うけどね。


疲れていたので昼過ぎまで仮眠をとり
その日はバンディにモスクやアグラー城(アグラー城から見るヤムナー河とタージマハルは素晴らしかった!)に連れて行ってもらい
夜はピザハットでピザ食って終了。
眠りに就く。




翌朝、2階の部屋からフロントに下りると
バンディが待っていた。
「グッモーニンッ!ハワユー、トゥデイ?!」


隣にはバンディと同年代ぐらいの男。


「ディス イズ マイフレンド!!」


ひとり増えた・・・。







       つづく